教育現場でのカウンセリング~その4~(一部無料公開)

(一部無料公開)

前回アップした事例問題。

今回はその解答と解説になります。

『小学校の教師のMさんと児童の会話』

これは小学4年生の担任M先生とクラスの子供(T)の会話のやり取りです。
Aという子供(男子)に対して何人かが無視をしたり、プリントを投げて配ったりしているのをM先生が見つけ、やっている側のうちの一人であるTに後で別室で事情を聞くところです。
これを読んで問いに答えてください。

T1 だって、Aだって俺達のことを無視したり、叩いてきて「なんだよ!」って言っても「アハハハ」って笑って謝らないで行っちゃうし、こっちの話をちゃんと聞いてくれないし・・・
M1<                        >

問題1
M1で、あなたならどんな風に応じたくなりますか?今回は選択肢はありません。
あなたなりの応答をいくつか作成してください。

問題2
あなたは、これはいじめであると思いますか?

【解答・解説】

小学校4年生の教室で起きた出来事ということですね。

A君に対してクラスメイトの何人かが無視をしたり、プリントをA君には投げて配ったりしていたということで、その現場をM先生が直接自分の目で発見をし、先ずはそうした行動を取っていた子どものうちの一人であるT君から事情を聞こうと思ったようです。

なぜT君から聞こうと思ったのかはこの文章ではわかりません。

T君が中心的な動きをしているとM先生が了解し、接触を試みたのか。

あるいは中心的人物からではなく、その周辺で動いている人間から事実関係を確かめていこうということで、それがT君だったということなのか。

はたまたT君のキャラクターからこうした事情を聞きやすいと判断したのか。

いずれにしてもM先生はT君一人を別室に呼び、じっくりと話を聞こうという選択をしたようです。

実はこの事情を聞くということ一つも、相当に神経を使って動かなければなりません。

もしこのケースがいじめであった場合、いじめた側の子どもたちは、事実を証言しようとしない場合が多いからです。

この事実確認というものも、学校の現場では思ったよりも安易に行われているようです。

しかしやった子どもに「本当のことを言いなさい」「どうなんだ」と真正面から迫っても、簡単には真実を証言してくれないケースが多いわけです。

子どもにしてみれば、自分の身を守るとか、やったことを責められると思えば、口を閉ざすというのは当たり前のことです。

また、直接いじめに関与していない子どもたちに事実確認のためのヒアリングを行っても、そうした子どもたちもあまり口を開いてくれず、思うように事実関係が掴めない場合もあります。

自分が喋った内容をどういう材料として使われるかに不安を感じれば、それは子どもたちにしてみれば言いたくはなくなるでしょうし、たとえいじめの事実を証言したとして、「じゃあ君は見ていてなんで止めなかったんだ」と言われるのではないかと思えば、やはり事実を証言する気にはなれないものでしょう。

仮にいじめの事実を堂々と語れる子どもがいるとするならば、それは普段からいじめに対して異を唱えていたり、先生にいじめについて知らせたりという動き方をしてきた子どもでしょう。

またこれも当然ですが、いじめられた子どもにいじめの事実について直接確認をとろうとしても、口を閉ざしてしまう子も少なくないのですが、いじめられる子どもがなかなか告白できない理由については、また別の機会にお伝えします。

ですから子どもから事実確認を行う場合には、このような背景や子どもたちの立場、心理に対して充分な配慮が必要になります。

関わった子どもたちに直接確認して事実関係を把握しようと簡単に考えるような、手っ取り早く解決を図ろうという発想だけで動くのは危険だということになります。

ちなみに、子どもがいじめを苦に命を絶つような事件が起きた時に、学校側が「いじめの事実はなかった」というような発表をして社会から「隠ぺいだ」と指摘されることがあります。

しかし学校によっては隠ぺいではなく、いじめの事実関係を把握できずにいるケースがあると思われます。

それは前述したように、子どもたちに手っ取り早くヒアリングをおこなったところで、そうそう簡単に事実関係を確認できるような証言が得られないからです。

ただ、もしそうであるならば、「いじめの事実はなかった」ではなく、「いじめの事実確認ができずにいる」「いじめがあったということをきちんと把握できていない」というふうに発表するところなのです。

それを「いじめの事実はなかった」と発表してしまうと、あとでその事実が明らかになったときに「隠ぺいだ」という話になりかねません。

さて、演習の解説に戻ります。

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