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肯定的配慮と肯定することの違い
カウンセリングでは、クライエントの話を「肯定的に聞く」ということが大事だとされています。
これはカウンセリングに限らず、日常の会話、コミュニケーション全般に通じることかもしれません。
ですが、カウンセリングではこの「肯定的に聞く」ということと、相手の話しを肯定するということとを、明確に区別しています。
ロジャーズはカウンセリングにおいて、カウンセラーはクライエントの話を出来る限り肯定的な配慮をもって(積極的な関心をはらって)聞くことがセラピーを成功に導くうえにおいて極めて重要であると指摘しています。
これはカウンセラーの基本的な3つの態度の一つとして、カウンセリングを学ぶ者の誰もが最初に目にし、耳にするところです。
カウンセリングでクライエントがカウンセラーに信頼を寄せ、そこにカウンセラーとクライエントの信頼関係が築かれなければカウンセリングそのものは上手くいきません。
これは別な言い方をするならば、クライエントが「このカウンセラーは自分の一番言いたいこと、訴えたいこと、わかってもらいたいことを実によくわかってくれる」と思えること、そのような人間関係の上に立って行われるセラピーは成果が出やすいということです。
カウンセリングにおいて語られるクライエントの話は、そのクライエントがなかなか理解してもらえない気持ちや思い、考え、立場、感情といった苦悩の歴史についてでもあります。
そうした話をひたすら真剣に聞こうとし、ひたすら理解に努めようとしているカウンセラーの姿を目の当たりにすることによって、クライエントは安心や暖かさ、つまりそこに「人間」を感じるのです。
この経験によってクライエントは、自分が直面している大きな問題、心の問題にカウンセラーと共に足を踏み入れていこうという気持ちになっていくわけです。
そしてその過程においてクライエントは自分がなかなか受け入れられずにいたり、怖れたり避けたり抑圧してきた感情(心の動き)や混乱、困惑、悲しみ、苦痛などを率直に語ります。
それをカウンセラーに肯定的に受け入れてもらうことによって、自分自身もその怖れや回避、抑圧してきた感情や混乱、困惑、悲しみ、そして苦痛を、自らも受け入れられるようになっていくわけです。
またクライエントが語った内容をカウンセラーは落着いた、暖かい語りによって投げ返していくわけですが、そうしてクライエントは怖れや混乱、困惑といった感情の不安定要素のない、洗練された自分の話しの内容をカウンセラーの語りによって改めて自分の耳で聞くことになります。
自分の話や言葉をカウンセラーによって洗練された形(応答)で投げ返してもらうことで、クライエントはその自分自身の状態を客観的に確認することが出来るようになってきます。
そうして整理された自分の実態を以前よりも冷静に振り返ることによって、「次なる手」を考えようとしたり、なぜそのように自分が追い込まれていったのかを客観視したりしようとし始めます。
この経験の連続がいわばカウンセリングにおけるカウンセラーとクライエントとの「対話」であり、こうした対話が織り成されてこそ、人は変わっていく、もしくは変わろうとしていくといえるでしょう。
そしてそこで大切なことは、相手の話しを肯定的に聞くことであって、相手の話しを肯定することではないということをしっかりと理解し、実践できるようになることです。
同感・同調と確認・理解の違い~その1~
そこで、肯定的に聞くということと肯定するということとの違いをより具体的に解説していきたいと思います。
では次のある小学校の先生の語りについて考えてみましょう。
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