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さて、前回は応答演習問題をご提示しましたが、今回はその応答演習問題の解答と解説になります。
先ずは前回ご提示した問題を改めて。
相談内容は職場の人間関係についてのようです。
そのカウンセリングの初回の冒頭部分のやり取りの逐語記録になります。
下記のやり取りを読み、下の問題の解答を選んでください。
そして、なぜその回答が正解と言えるのか、その根拠の説明も書いてください。
回答と解説は次回のコラムで。
【応答演習】『職場に合わない人がいて悩むSさん』
【職場に合わない人がいて悩むSさん】
これはSさんとカウンセラー(C)とのカウンセリングの導入部分のやり取りです。
これを読んで問いに答えてください。
S1 最近イライラするんです・・・・・・・・・
C1 「 」
S2 なんかこう、職場で、合わない、今、私が仕事をしているデスクがあって、その隣で仕事、隣のデスクで仕事している人がいるんですけど、その人とこう、なんか合わない感じがして、どうも居心地が良くない感じになるんですね。
C2 隣の人となにかこう合わない感じ。それで居心地が良くない。
S3 ええ。なんでかな、っていうか、理由は、理由はというか、思い当たることはある、ありますね。ちょっとね、こう、ストレートな物言いをする人で、それがこう、そんな言い方をしなくてもと思う場面があって、まあ、悪い人ではないと思うんですけどね。でもなんか、やっぱり気になるっていうか、グサっと突き刺さることがあって、で、その場では言い返さないようにしてるんですけど、やっぱりなんか自分の中で引っかかってしまって、それでイライラしてしまうというかね。上手くその辺がね・・・・
S4 ストレートに言われたことが心に突き刺さって、けっこう尾を引いてしまうんですね。
問題
C1で、あなたならどんな風に応じたくなりますか?次の5つの中から適切であると思うものを一つ選んでください。
1)最近イライラする?
2)何か思い当たることはあるんですか?
3)イライラするんですね。
4)ストレスが溜まっているということ?
5)そうですか。
解答&解説
さて、面接の最初の部分というのは非常に重要です。
ここで相手の言っていること、伝えたいことを取り違えて聞き取ってしまうと、面接全体の流れがずれていってしまいます。
一旦面接や話の流れがずれていってしまうと、後から修正するのはかなり難しくなってきますし、だいたいにおいて修正できないまま、そのまま面接を終わってしまうことも多いです。
カウンセリングにおいて初回の面談が終わり、次の面接に予約が入らなかったり、初回で切れてしまう原因の一つには、このスタート部分のミスが響いてしまったケースが少なからず見受けられます。
そういう意味で面接でも一般の日常会話でも、最初の部分、相手の話の最初の部分をしっかり集中して正確に聞き取るというのは、極めて大切なことだといえます。
さて、そういった観点をもちながらC1の応答の選択肢を一つひとつ検討してみましょう。
先ず5)の応答からいきます。
5)そうですか。
こうした代名詞による応答は、出来る限り避けたいものです。
「そうですか」「そうなんですね」「そういうことは」「そうかも知れないですね」といった代名詞での応答を安易に(何も考えないで)入れてしまうと、次からの会話がぼやけてしまい、抽象的で不明瞭な内容になってしまう危険性があります。
また「そうですか」では、CがSさんのどの話をどういう風に理解したのかがSさんには伝わりません。
一見この「そうですか」は無難に相手の話しを理解したという風に伝わると思われるかもしれません。
しかし、事務的な伝達事項ならいざ知らず、自分の問題を真剣に切り出そうという場合の応答としては、やはり不適切です。
応答の基本は出来るだけ「具体的」であることと、出来るだけ「簡潔(短め)」であることです。
話の内容を「より具体的にしていく」ことで、カウンセリングは深まっていくわけです。
ですので、抽象的な表現、あいまいな応答は避けなければなりません。
一般の会話でも、自分は人との会話において話が深まっていかないと悩んでいる人には、できるだけ具体的な応答を入れていくことをお勧めします。
日常の会話で話が深まらなかったり、すぐに終わったりしてしまうという人は、「そうですか」を連発していないかチェックしてみてください。
ここまででもうお気づきの方もいるかも知れませんが、具体的な応答を返すためには、相手の話しを余程しっかりと聞いて理解していないといけなくなります。
しっかり聞けて、それで初めて具体的な応答を返せるわけです。
では次の選択肢に参ります。
2)何か思い当たることはあるんですか?
この応答を選択した人は、やはり日常会話の中ですぐに相手に質問をしたくなっていないでしょうか。
一般的に質問をするというのは、相手の話の腰を折るというか、相手が言いたいことをさえぎって邪魔することになるのです。
一般に質問をされるとそれはそれで答えにくいものですし、すぐに質問されたら「しっかりとこちらの言いたいこと、気持ちを聞いてくれた、理解してくれた」という感じにはならないものです。
例えば子どもがあざを作って帰ってきて、しかも下を向いて元気もなく、そのことについてもあまり語ろうとしない場合に、先ずほとんどのお母さんが「どうしたの?」と聞くと思います。
まあここまではいいのですが、それでも子どもは答えないか、答えにくそうにしていると、さらにお母さんは「何かあったの?」「そのあざはどうしたの?」「何も言わなきゃわからないでしょ」と続けてしまうことがあります。
こうなると、子どもはますます答えにくくなるはずです。
この時の子どもの気持ちを代弁してみるならば
「お母さん、今はソッとしておいて欲しい。あざのことも、出来れば何も聞かないで欲しい。時間が経てば言う気になるかも知れないけど、今はその事には触れないで。でもけがをしたということだけは知っておいてほしい」
というところでしょうか。
こういう場面に遭遇した時にピンときて、そこには触れないで「消毒しようね」「おやつあるよ」と言葉をかけたり、黙って見ているという姿勢に切り替えることを「相手の気持ちを察する」と言います。
Sさんに話を戻しますが、この時のSさんだって、「最近イライラするんです・・・・」と言ったまま、次の言葉が出てきません。
イライラするんですと言って、その後の「・・・・」にSさんのその時のどんな思いが読み取れるでしょうか?
次の言葉が出てこないのか。口にするのに何かはばかられるものがあるのか。
言ってしまったものの、急に言いたくないという気持ちが働いたのか。
この時点では何もわかりませんね。
そういう微妙な状況で「何か思い当たることはあるんですか?」と踏み込むのは禁物。
ちょっとデリカシーに欠ける問いかけかも知れません。
「言葉少な」なときこそ、こちらも慎重にならなければなりません。
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