共感と同感の違い~その3~【事例検討の回答・解説】(一部無料公開)

同感・同調と確認・理解の違い【事例検討の回答・解説】

『小学校の教師のRさん』
これはRさんとカウンセラー(C)のカウンセリングの導入部分のやり取りです。これを読んで問いに答えてください。

R1 先日、クラスの子同士のトラブルでそれぞれの保護者の方同士でもめてしまって、それで校長室で話し合いにまで発展してしまったんです。そもそも、私が対応したときに学年主任や校長先生への報告が遅れてしまったのがいけなかったので、それで保護者から学校に問い合わせがあって、電話を受けた校長先生が事情がよくわからなかったんです。それで生活指導主任のE先生からそこを注意されて、さらには私がいじめを見過ごしている
と言われて・・・・私としてはあれはいじめではなく、あきらかにその場のトラブルだと思うんです。でも、なんかそう言われてしまったんで・・・

C1 「                         」

問題
C1で、あなたならどんな風に応じたくなりますか?次の5つの中から適当だ
思うものを一つ選んでください。
 
1)あれはいじめではなく、その場のトラブルだったんですね。
2)いじめだと決めつけられたようで嫌ですよね。
3)どうしていじめではないと思うのですか?
4)自分としてはやはり不本意だなという思いが残るわけですね。
5)なんかそう言われて頭にきちゃったんですね。

【解説】

さて、まずはR先生の話の前半からいったいどういうことが起きたのかということの状況把握を出来る限りしていく必要があります。

クラスの子同士のトラブルというのですから、Rさんの担任するクラスの子供同士で何らかのトラブルが発生したということなのでしょう。そしてそのトラブルが子供同士、あるいは教室の中だけではおさまらずに保護者同士でもめるというところまでこじれてしまったようです。

ここだけで考えられることは、何らかの形で保護者の耳にこのトラブルの話が入り、それで保護者同士で連絡を取り、そこでうまく話がつかなかったのでしょう。それで校長先生の立ち会いのもとに、双方の保護者が話し合いをもつというところまでいってしまったということですから、これはあまり穏やかな話ではありません。

そして担任であるR先生がトラブルの報告を上司である管理職、この場合でいえば学年主任や校長先生に入れていなかったために、双方どちらかの保護者からの電話を取った校長先生が何も知らないで対応せざるお得なかった。そこを学年主任の先生に指摘され、注意を受けたということのようです。

R先生がR1で学年主任や校長先生への報告と敢えてふれていることから、普段から学校で起きたトラブルは学年主任や校長に方向を入れておくようにということを言われていたのでしょう。

ここまでのところでは、R先生は納得しているようです。つまり、自分は学年主任から注意を受けてもしょうがなかったと思っているのでしょう。それは「そもそも、私が対応したときに学年主任や校長先生への報告が遅れてしまったのがいけなかったので・・」と語っていることからもわかります。

まずはここまでのところでこの程度の状況把握はできると思います。

続いてR先生は、このトラブルの自分の対応について学年主任からどのような指摘を受けたと言っているでしょう。

「さらには私がいじめを見過ごしていると言われて・・」と言っています。
そしてその後ちょっと間があいてからすぐに「私としてはあれはいじめではな
く、あきらかにその場のトラブルだと思うんです」と述べています。

つまり、学年主任の先生はいじめであると表現していますが、R先生はいじめではなくその場のトラブルだと捉えています。しかも「あきらかに」といっていますので、R先生にしてみればかなり確信に近い観方のようです。

このR先生の話からは、実際に子供の間でどのようなトラブルが発生したのかはわかりません。ですので、わからない以上は下手な推測や憶測は控えるのが賢明です。

またここで多くの人たちはどんなトラブルがあったのかを聞きたくなると思います。そうなると、質問という形で真相を確かめようとし、R先生の観方と学年主任の先生の観方とどちらが適切なのかを確かめようとするでしょう。

そこで「もう少し状況を詳しく教えてもらえますか?」とか、次のような質問の形になるでしょう。

3)どうしていじめではないと思うのですか?

3)どうしていじめではないと思うのですか?

ある意味では正確な状況把握をしなければ相手の気持ちに共感できない、相手の気持ちを充分に理解できないという場合があります。そういう場合には的確な質問というものが必要になってきますが、ここではまだそれは早急というものです。

質問をする前に、まず相手の話していること、伝えたい気持ち、わかってもらいたがっていることを十分にこちらが理解しているということを伝えることで、つまり共感的理解を示すことによって、相手とのその場の関係(信頼関係)を作ってから、状況の確認を行う必要があると判断すればそのように動けばいいと思います。

ただ、だいたいにおいて共感的理解を示す応答で対応しながら相手の話をじっくりと聞いていくことによって、状況把握もかなり出来るものですので、焦ってすぐに質問に走ることだけは避けたいところです。

また、特にこの「どうしていじめではないと思うのですか?」という質問の仕方はいただけません。「どうして」「なぜ」という質問の仕方をすると、そう質問された相手は自分がなにか責められているような気持ちになることがあるからです。

この場合もR先生がいじめであると認識していないことを問題視しているかのようなニュアンスの質問の仕方に聞こえるのではないでしょうか。ですから質問をするというのは我々カウンセラーにとっては、実は大変難しい種類の動き方なのです。

続いて他の応答を検討してみましょう。

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